映画『ゲット・アウト』(ネタバレあり)
※この記事はネタバレを含みます。
【タイトル】ゲット・アウト
【観た媒体】プライムビデオ
【観たきっかけ】前評判が高くずっと気になっていたので
【私的評価】★★★★★
【あらすじ】
映画は一人の黒人男性が夜道を歩いているところから始まる。
すると、そこに一台の白い車が通りがかる。
男性が歩く方向を変える度に車もそれに合わせて男性の後を追いかけてくる。
気味が悪くなった男性はその場を離れようとするが、車から降りてきた鉄仮面の男に首を絞められ、気絶してしまう。
鉄仮面の男は気絶した黒人男性を車のトランクに乗せるとそのままどこかへ走り去った。
場面は変わって、主人公クリス・ワシントンの家。クリスは若手写真家だ。
彼は恋人のローズ・アーミテージの実家に、挨拶を兼ねて旅行に行くための荷造りをしていた。
クリスは黒人、ローズは白人のカップル。クリスは自分がローズの家族に受け入れられるか心配している。
ローズに自分が黒人であることを両親に伝えたか確認するとローズは
「伝えていない。でも私の両親は差別主義者じゃない。オバマに三期目があったら投票している」と答えた。
留守中愛犬の世話を頼んだ運輸保安庁で働く親友の黒人ロッド・ウィリアムスから電話がかかってきてよろしく頼むと伝えると
「白人の家なんか行かない方がいいぞ」と冗談を返された。
そして不安を抱えながらクリスとローズは車に乗り込みローズの実家に向かった。
しかしその道中、思いがけず飛び出してきたシカを轢き殺してしまう。
そのシカを見てクリスは何か考え込む。
警察の聴取に応じている最中、警官は運転をしていたローズだけでなく、クリスにも身分証の提示を求めてきた。
ローズは「運転をしていたのは私で彼は関係ない」と警官に反論するが、クリスは「いいよ、慣れてる」と身分証を出そうとした。
それでも彼女は必要ないと警官に食い下がった。
ローズのあまりの剣幕に警官もクリスの身分証は諦め、聴取は終わった。
ローズの実家に着くと、まず庭の管理人である黒人のウォルターが手を振っているのが目に入った。
出発前の不安に反してクリスは熱烈に歓迎され、ローズの両親にハグで出迎えられた。
クリスとローズはここに来る途中、シカと衝突事故を起こしたことを話すと、
ディーンが「それは大変だったね、でも正直に言うと私はシカにはうんざりしている。
轢いてくれたのはむしろ有難いよ」と答えた。
キッチンには給仕係の黒人女性、ジョージナがいた。
ディーンは「母はこのキッチンが好きだった。このキッチンにも彼女の一部を残してある。」としみじみ語った。
ディーンとクリスは二人で庭を散歩しながら歓談した。
ディーンはクリスが疑心暗鬼になっているのを察してか「典型的だろう?白人の家庭に黒人の使用人、元々は両親の世話をしてもらっていたんだが辞めさせたくなくてね。
両親が亡くなった後も手伝いをしてもらっている。自分は断じて差別主義者ではない。
オバマは素晴らしい大統領だ。もし彼に三期目があったら投票してたよ。」
とローズの言った通りのことをしゃべった。
さらに死んだローズの祖父、ローマン・アーミテージは陸上選手としてオリンピックに出場し、伝説的な黒人選手、ジェシー・オーエンスに競り負けたことも教えてくれた。
そうしているうちに準備が整い、4人でランチをすることになった。
クリスは身の上話を聞かれた。どこの家でも娘の彼氏が来た時はそんな話題になるだろう。
クリスは自分の母親について聞かれ、事故で亡くしたことを告白した。
すると精神科医の性分なのか、ミッシーがその事故について銀のスプーンをカチャカチャ鳴らしながら詳しく聞き始めた。
クリスは母の死がトラウマになっている為、話すのを躊躇していると
給仕係のジョージナがお茶をこぼした。動揺するジョージナにミッシーが
またしてもスプーンをカチャカチャ鳴らしながらいいから下がるように言うとジョージナは謝罪しながら下がっていった。
ディーンが「君はタバコを吸うのか?」とクリスに聞きだした。クリスが「ええ」と言うと「それならミッシーの催眠療法を受けるといい。私もそれで辞められた」と勧めた。
クリスが「遠慮しときます」と断るとミッシーは「興味があったらいつでも言ってね」と彼になげかけた。
そうしていると、ローズの弟、ジェレミー・アーミテージがやってきた。
彼は医学生をしている。
その日の夜は、ジェレミーを加えて夕食を囲んだ。
ローズの初恋の思い出話などに花が咲くが、酔っぱらったジェレミーが
クリスの身体能力について興味を持ち、少々無礼な態度で質問を繰り返した。
「どんなスポーツをやってた?」「格闘技はどうだ?」「その遺伝子構造なら絶対に強い、やってみろ!」そう言ってクリスに飛びかかった。
クリスは「酔っ払いの相手はしない!」と叫ぶと、ジェレミーはアーミテージ夫妻に制され大人しくなった。夫妻はクリスに謝った。
深夜、目が覚めたクリスはタバコを吸いに外に出た。
すると、向こうから走ってくる人影が見えた。庭の管理人のウォルターだ。
こちらを目がけて突進してくる。
いよいよ、ぶつかりそうになった瞬間、ウォルターが急転換して衝突は避けられた。
不気味に思ったクリスだが、ふと家の方に目をやるとジョージナがじっと外を見つめていた。
ところがそれは、夜の小窓を鏡代わりにし、そこに映った自分を見てうっとりしているようだった。
奇妙な出来事に疲れたクリスが家の中に入ると、ミッシーがソファーに腰かけていた。
「お願いだから、そこに座って」と正面に向き合うように腰掛けるように促された。
断るのも悪い気がしたクリスはしぶしぶミッシーに付き合うことにした。
ミッシーは昼間と同じ、銀スプーンとティーカップをカチャカチャやりながらクリスの母の事故死について、再び詳しく問いただした。
クリスは母が事故に遭っている間、警察に連絡すると母の死が現実になってしまいそうで何も出来なかったことなど、涙を流しながら話した。
すると自分が動けないことに気づいた。それをミッシーに告げると、
ミッシーは「次は床に沈むのよ!」と言ってスプーンをカチャーンと鳴らした。
次の瞬間、クリスは急に暗黒の奈落の底に落とされた。
どんどん深みにはまっていく、地に足がつかない感覚が続いていく。
どんどん視界が狭くなってミッシーがクリスの瞼を閉じると漆黒の闇に包まれた。
そこで目が覚めた。クリスはベッドの上にいた。辺りはまだ暗い。
あまりにも不気味なことが続き、悪い夢でも見たのかと思ったが、クリスは自分が煙草の匂いに嫌悪感を抱くようになっていることに気づいた。
朝、クリスは散歩に出かけた。ウォルターが薪を割っているのが目に入り、
「よぉ、こき使われてるな?そういえばまだちゃんと話してなかったな!」と声をかけた。
するとウォルターは「嫌な仕事はないよ、君には謝らなければならないね、昨日の夜はびっくりさせて悪かった。ちょっとした運動だったんだ」と話した。
おそらく同年代にもかかわらず、やけに上から目線の物言いにクリスはまたしても違和感を覚えた。
この日は親戚を集めてのパーティーが開かれた。
ローズによれば「典型的な白人」が多く、苦手だと聞いてクリスも不安になった。
集まった親戚はただの使用人であるはずのウォルターとしっかりハグをするほど人当たりが良いように見えた。
しかし、クリスは挨拶を交わすと「君はゴルフをやるか?タイガー・ウッズは素晴らしい選手だ。ちょっとスイングしてみろ」や
「流行は一周する。今は黒がトレンドだよ」など黒人を無理に持ち上げているような物言いにクリスは戸惑う。
そして盲目の画商、ジム・ハドソンに出会う。彼は写真家であるクリスの作品も知っているようだった。
白人に囲まれて居心地が悪い中、一人の黒人男性ローガンを見つけ声をかける。
「良かった、黒人がいて心強いよ」そう言ってグータッチをしようとするとローガンは手をパーにして握手をした。
ローガンはその若さからは不釣り合いの、2回りは年の離れてそうな初老の白人女性パートナーとパーティーに参加していた。またしても違和感を覚える。
居心地が悪くなったクリスは部屋に戻るが自分のスマホの充電ケーブルが抜かれていることに気づく。
後ろを振り向くと、そこにはジョージナが立っていた。
「ごめんなさい、それは私が不注意でしてしまったの」と微笑みながら謝罪した。
クリスは彼女の不気味な雰囲気に戸惑いつつも「いいよ」と気遣った。
するとジョージナは「ここのアーミテージ一家はとても良くしてくださるの」と笑顔で言った。
クリスが「大丈夫か?ちゃんとやっていけてるか?」と聞くとジョージナは「大丈夫」といった後、突然涙を流し始めた。
「ノーノーノー・・・」と繰り返しながら笑顔で涙を流し続けた。とても不気味である。
スマホで親友のロッドに電話をかける。
奇妙な黒人使用人、奇妙な白人パーティー、奇妙な白人と黒人のカップル、スマホの充電ケーブルが抜かれ、まるで外と連絡を取らせないようにされていること・・・
すべてを話すとロッドは「わかった!きっと性奴隷だ!黒人を性奴隷にして売り飛ばそうとしてるんだ!お前も危ないぞ!」と突拍子もないことを言い出した。
クリスはさすがに馬鹿馬鹿しいと思ったのか、電話を切ってパーティーに戻った。
パーティーではローガンがみんなを前にして演説を行っていた。
クリスはその様子をスマホで撮ろうとシャッターを切るとパシャッとフラッシュが光った。
すると、ローガンは一瞬立ち止まり、クリスを見つめる。すると鼻血が出てきた。
クリスは「悪い、フラッシュを切り忘れたみたいだ。すまない」
謝罪するクリスにローガンは錯乱して「出ていけ・・・出ていけ!出て行け!」と掴みかかってきた。
ジェレミーに羽交い絞めにされ、ローガンは家の奥に連れていかれた。
しばらくして正気を取り戻したローガンはクリスに掴みかかってしまったことを謝罪し、クリスもそれを受け入れたが、気分はすぐれない。
アーミテージ家に「少し散歩したい」と許可を取り、ローズもそれに付き添うことにした。
ディーンは「よし、それじゃあ気分を変えるためにビンゴはやるのはどうだ?」と提案し、
クリスとローズが散歩している最中、その他のメンバーでビンゴをすることにした。
クリスはローズに身の回りに起きた異変についてすべて話し、もうこの家を離れたいと正直に打ち明けた。
ローズもそれを了承し、家族にはなにか適当に理由を言って今夜家を出発することにした。
その頃、庭ではビンゴカードを使って何か競りのようなものが行われていた。
ディーンが手指で金額のようなジェスチャーを示し、パーティーの来客がビンゴカードを提示して入札をしている。
その傍らにはクリスの大判写真が飾られていた。
競りは盲目の画商、ジムが落札したようだ。
しばらくしてクリスにロッドから電話が入った。
実は先ほど撮ったローガンの写真をこっそりロッドに送っていたのだ。
ロッドはローガンに見覚えがあり、調べたが地元の知人のアンドレにそっくりだという。
クリスは「アンドレ?その男はローガンと言ったぞ」とロッドに話すが
「確かにアンドレだ。今は行方不明らしい」とアンドレのSNSページを示しながら言い、クリスも混乱した。。
続けてロッドは「やっぱり黒人を性奴隷にしているんじゃないか?とにかくもう早く帰ってきた方がいい」とクリスに告げるとクリスは「今夜帰る」と言って電話を切った。
クリスが帰る為の荷造りをしていると、ローズの部屋の一角に物置のようなスペースを見つけた。物置は扉が半開きになっている。
気になったクリスが近づくとそこには赤い箱があり、恐る恐る開けてみるとローズと黒人の2ショット写真が何枚もしまってあった。
その写真には使用人のウォルター、ジョージナがそれぞれローズと2ショットで映っている写真も含まれていた。
その時、後ろで「支度できた?」というローズの声がした。
クリスは驚きつつ頷くとローズと一緒に玄関に向かった。
クリスはローズに車の鍵を渡すように言うが、ローズは「変ね、どこにしまったかしら・・・」とカバンの中を探すが、なかなか見つけられない。
すると、玄関ではジェレミーがラクロスのクロスを持って出口を塞ぐように立っていた。
横からディーンとミッシーが「どうしたの?」と聞いてきた。
ローズが「クリスのペットが急病で帰ることにしたの」と言うと、ミッシーが「そう、それは残念ねえ・・・」と話す。
クリスは「お世話になりました。ローズ、車の鍵を」とローズに再度鍵を渡すように言うがローズはまだ見つけられない。
「ローズ、鍵だ!」クリスが少しいら立ったように言うと、ローズはとっくに鍵は見つけたがわざと渡さなかったかのように無表情で車の鍵をクリスに見せつけ、
「鍵は渡せない」と答えた。
そこでクリスはローズも自分を家から出さないように嵌めようとしたのだと知る。
ジェレミーがクロスを振りかざしてクリスに襲い掛かってきた。
必死に抵抗するクリスだったが、次の瞬間ミッシーが銀のスプーンでティーカップをカチャーンと鳴らすと、また催眠がかかり、クリスは意識を失ってしまった。
もうろうとする意識の中、クリスはどこかに運ばれていった。
場面が変わって、ロッドの家になる。
ロッドは何度もクリスの携帯電話にかけるが、その都度留守電になるばかりだ。
これは何か事件に巻き込まれたと考えたロッドは警察に相談しに行く。
警察では黒人の女性警察官が相談にあたってくれた。
ロッドは自分の親友が彼女の実家に行ったきり帰ってこないこと、もしかしたら黒人を性奴隷にして売りさばいているのかもしれないと話すが、女性警官と同僚はその話を聞いて爆笑する。
「どうせ白人女に騙されてそこら辺をフラフラしてるだけでしょう」と言って真面目に取り合ってくれなかった。
クリスが目を覚ますと地下室にいた。ソファーに手足を縛られて身動きが出来ない。
目の前にはシカのはく製が飾られていて、また古めかしいテレビが置かれていた。
するとテレビから映像が流れてきた。
アーミテージ家の祖父、ローマン・アーミテージが自身の確立した「凝固法」と呼ばれる脳移植について説明する映像だった。
凝固法に関する説明が終わると銀のスプーンとティーカップの映像に切り替わり、例のカチャーンという音を聞いてクリスは再び眠ってしまう。
場面はロッドの家に切り替わる。
警察も捜査に協力してくれないのでロッドはどうやってクリスを助け出そうか途方に暮れていた。
相変わらずクリスのスマホにつながらない。そこで、今度はローズのスマホに電話をかけることにした。
すると電話がつながった。そして彼女にクリスが帰らないことを伝える。
ローズは「もうクリスは帰った」と嘘をつくが、ロッドは運輸保安庁に務める仕事柄、ローズの嘘を見抜いた。
一旦保留にしてスマホの録音を開始し、何か手掛かりを探ろうとするが、ローズに「そう、あなたは私と寝たいのね?」と上手くはぐらかされ、作戦は失敗に終わった。
再び地下室、クリスは目を覚ました。テレビに新たな映像が映し出された。
競りに勝った画商のジムがスキンヘッド姿で映っている。
ジムは「気分はどうだ?インカムでつながってるので答えろ」とクリスに話しかける。
そこでジムはこれから手術をして自分の脳をクリスの体に移植し、体を乗っ取ると告げる。
つまり、アーミテージ家は脳移植を希望する白人の為に黒人の拉致や誘拐を繰り返し、手術をして黒人の肉体を提供することを生業とする一家だったのだ。
ローズがクリスに接近して恋愛関係になったのも実家に誘い込むのが目的だった。
クリスは「なぜ黒人なんだ?」と尋ねた。
ジムは「憧れだ。ある者はより逞しくありたいと思う。だけど、私は違う。目だよ。その目で世界を見てみたい。」と答えた。
写真家として美しいものを捉えるクリスの目が欲しいと思ったのだろう。
クリスが「イカれてる」と言うと、テレビの中継は終わった。
クリスはイライラが募り、手でソファを掻きむしる。
すると、ソファの表皮が剥がれ、中から綿が出てくるのを見てクリスはあることを思いつく。
しばらくするとまた銀のスプーンとティーカップの映像がテレビから流れ、クリスは再び眠らされる。
地下の手術室では着々と手術の準備が進められ、執刀医のディーンがジムの頭が切開し、脳などを取り出す作業を行っていた。
手術はいよいよクリスにメスを入れる段階になった。
ジェレミーはクリスを手術室に運び込むため、車いすを伴ってクリスが眠る部屋に向かった。
部屋に着いたジェレミーがクリスが眠っていることを確認するとソファに付けられた手錠を外し、クリスを運ぶための準備をしている。
すると、ジェレミーの背後に眠っていたはずのクリスが立っている。クリスは傍らにあった鈍器でジェレミーを殴りつけるとジェレミーは血を流しながら気絶して倒れた。
クリスは耳から綿を取り出した。
ソファから出た綿を耳栓代わりにして催眠術を回避していたのだ。
ディーンは手術室で準備を進めていたが、ジェレミーが中々戻ってこないので様子が気になって廊下に出た。
次の瞬間、クリスがシカのはく製でディーンの喉元を一突きした。流血したディーンはよろけながらその場に倒れ込んだ。
クリスが地下室から1階に上がると、ミッシーと鉢合わせた。すぐ横のテーブルには例の銀のスプーンとティーカップが置かれている。
再び催眠術をかけようとするミッシーとクリスの間でティーカップの奪い合いが起こる。
ミッシーはそばに置いてあったナイフでクリスに切りかかった。クリスはナイフを手で受け止め、クリスの手を貫通した。
それでもクリスはひるまず立ち向かい逆にナイフでミッシーを突き刺した。
クリスが外に出ようとすると、後ろからジェレミーが飛びかかり首を絞めてきた。
もう少しで落とされるところだったが、間一髪ドアの金具をジェレミーの脚に突き刺し、蹴りを入れてジェレミーを気絶させ、車の鍵を奪った。
次にローズの部屋が映し出される。
ローズは今までの雰囲気とは打って変わり、髪をオールバックにし、白いシャツを着ている。カラフルなシリアルを手づかみで食べ、黒いストローで牛乳を飲んでいる。
そしてパソコンで黒人アスリートの情報を検索していた。おそらく次の獲物を探っているのだろう。
彼女はイヤホンで音楽を聴いていて家の中の乱闘騒ぎに気づかない。
部屋には今まで仕留めてきた黒人の写真が飾られていた。
クリスはジェレミーの車に乗り込んだ。
その助手席には映画冒頭に黒人を拉致した男が身に付けていた鉄仮面が置かれていた。
クリスは車を発進させ、警察に通報する。
警察に事情を説明しようとした瞬間にジョージナが車の前に飛び出し、彼女を轢いてしまう。
その騒音でローズが外の異変に気づいた。
クリスは一刻も早く逃げなければならないのにも関わらず、母の事故死のトラウマからジョージナを放っておくことができない。
結局クリスは車を降りてジョージナを抱きかかえると、車に乗せて再び走り出した。
そこに猟銃を持ったローズが家から出てきた。
一度は車に向けて発砲を試みるも、「おばあちゃん・・・」とつぶやき銃口を下げる。
運転を続けるクリスだったが、目を覚ましたジョージナに「よくも家を壊したわね!」と運転の邪魔をされ、車は木に激突してしまった。
クリスは意識を取り戻したが、助手席のジョージナは息絶えたようだ。
ウイッグでよく見えていなかったが、彼女の頭には手術痕があった。
サイドミラーを確認しようとすると、ローズが猟銃で発砲してきた。
クリスは車から降りて何とか逃げようとするが、足を負傷していて思うように歩けない。
後ろからローズが発砲しながら迫ってくる。
そしてまたその後ろから黒人使用人のウォルターが全速力で迫ってきた。
ローズが「おじいちゃん・・・」とつぶやくとウォルターはクリスに飛びかかり、馬乗りになった。ウォルターの頭にもまた手術痕があった。
とっさにクリスがスマホを取り出し、ウォルターをフラッシュ撮影するとウォルターは一瞬大人しくなり、クリスから離れた。
後ろで猟銃を抱えていたローズに「貸せ、私がやる」と言うと彼女から猟銃を受け取った。
すると、ウォルターはクリスではなく、ローズの腹部を撃ち、最後は自分で頭部を撃ち抜いて自害した。
腹部を撃たれて瀕死のローズが猟銃に手を伸ばそうとしていると、クリスは猟銃を遠ざけ、馬乗りになった。
そして彼女の首を絞めようとすると、ローズは「助けて・・・愛しているの・・・」と命乞いをし出した。クリスは躊躇する。
その時、パトカーが到着した。ローズはパトカーに向かって「助けて!」と叫んだ。
パッと見れば、この状況は黒人男性が白人女性に馬乗りになって首を絞めようとしている状況だ。観念したクリスは両手を挙げてパトカーの様子をうかがった。
すると、そこから出てきたのは親友のロッドだった。パトカーには「空港警察」と書かれていた。
ロッドはこの状況にパニックになりながらも「クリス!」と叫ぶと、クリスはそのままパトカーに乗り込んだ。
ロッドはクリスに「だから行くなと言ったろ?」と笑えない冗談を言った。
クリスがロッドに「よくここがわかったな」と話しかけると「俺の仕事は困難に立ち向かうことだ。この状況からすると、任務完了のようだな」と返した。
去り行くパトカーを見つめながら、ローズは息絶えた。
【感想】
強いメッセージ性を持ち、沢山の伏線が上手にちりばめられた素晴らしい映画でした。
ホラー系は苦手で、観終わった後もまだちょっと引きずっているのですが、それでも観て良かったと思います。
この映画の大きなテーマは人種差別、特に黒人差別です。
監督のジョーダン・ピールはコメディアン出身の映画監督で、このゲット・アウトが初めての監督作品だったそうです。初めてでこんな映画を撮るなんてすごいですね。
秀逸だと思ったのはクリスとローズがアーミテージ家に向かう途中でシカを轢いてしまい、警察の聴取を受けるシーンです。
運転していないクリスまで身分証の提示を求められ、ローズはその必要はないと警察官に詰め寄りました。
一見、黒人の彼氏を思いやって差別に抗議する心優しい彼女に見えます。
しかし実際は違います。
ローズはこれからクリスを拉致監禁して肉体を商品として売りさばくつもりなのです。
これから行方不明となる予定のクリスと自分が一緒に居たということが警察の記録に残ってしまうのはまずい、なのでなんとしてもクリスの身分証を警察には見せたくなかっただけなのです。
それが、観客に「これは差別だ」というフィルターを通して見させることで上手くミスリードを誘いました。
沢山のメタファーも含まれていました。
その一つがシカです。
前述の通り、クリスとローズはシカを轢き殺してしまいましたが、そのシカの品種はブラックバック(Black Buck)で、「粗暴で女性を襲う黒人」という(かなり偏見が含まれる)スラングであり、なおかつシカ(deer)も「彼女を作ろうとして失敗する男」という意味のスラングだそうです。
父親のディーンがクリスに「シカにはうんざりしている、轢き殺してくれて有難い」と言ったのは暗に黒人に対する差別が含まれているのです。
これはアメリカ英語の知識がないとなかなか気づけない演出ですね。
シカは後半地下室のはく製として再登場します。
中身を抜かれて皮だけにされる、まさにこれから手術を受けて肉体から意識を抜かれるクリスを暗示しているのです。
ローガンやウォルターなど、手術を受けた黒人の意識を呼び覚ますスマホのフラッシュにも意味があります。
ご存じの方も多いかと思いますが、アメリカでは白人警察官が黒人を暴力で押さえつけ、窒息死させるという事件が相次ぎました。
エリック・ガーナー窒息死事件では、警察官の暴力をスマートフォンで撮影したことがきっかけで告発に至りました。
それ以降、スマートフォンでの撮影はそういった警察官の暴力への抑止力として機能するようになりました。
ゲット・アウトの中でフラッシュが黒人の意識を呼び覚ますのに使われるのはその為なのです。
余談ですが、この映画は当初別のエンディングで終わる予定でした。
そのエンディングとは最後クリスがローズに馬乗りになり首を絞めて殺害してしまいます。
そこにパトカーが到着し、警察は黒人男性が白人女性を襲ったと誤解してクリスを逮捕してしまいます。
その後場面が刑務所に切り替わりロッドが面会に訪れ、クリスを救うために事件のことを聴こうとしますが、クリスは「もういいんだ、奴らはもういない。俺が止めた。」と言って面会を切り上げ、収監所に戻っていくというラストです。
なかなか強烈なラストでこれも悪くないと思うのですが、前述の通り、この映画を撮影している最中、白人警察官が黒人に暴力をふるうという事件が相次いでいたという時代背景がありました。
映画より現実の方が残酷になっていく中、このラストではあまりに救いがないと判断し、エンディングを差し替えたというわけです。
パーティーのシーンで、集められた白人の人々はまるで物を見るような褒め方ではあるものの、黒人のすばらしさを認めています。
画商のジムも手術を受ける際に「憧れだ」と言っていました。
それとは逆にロッドが黒人警察官に助けを求めるシーンでは「どうせ白人女にいいように振られたんでしょ?」と差別とまではいかないものの、非常に黒人自身が黒人を低く見ているようなシーンが印象的でした。
BLM運動をはじめ、いま人種差別に関するニュースが日に日に多くなっている気がします。最近のアメリカではアジア系住民に対するヘイトクライムが相次いでいるそうです。
今一度、差別とは何なのか、考えてみるいいきっかけになる映画でした。