トーマスの視聴覚室

トミえもんの視聴覚室

観た映画や、読んだ本についてのレビューを中心に書きます。時々雑談も挟みます。

映画『エクストリーム・ジョブ』(ネタバレあり)

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※この記事はネタバレを含みます。

 

【タイトル】エクストリーム・ジョブ

【観た媒体】レンタルビデオ

【観たきっかけ】前評判が高くずっと気になっていたので

【私的評価】★★★★★

 

【あらすじ】

韓国の警察官コは麻薬捜査班の班長。仕事には人一倍真面目に取り組んでいるが、なかなか成果を挙げられず、出世レースは同期や後輩に追い抜かされてばかり、麻薬捜査班の解体も検討されている。

コはこの日も麻薬捜査班のチャン、マ、ヨンホ、ジェホンと共に、麻薬密売グループの摘発に赴いたが、なんとか密売グループの逮捕にこぎつけるものの、車十数台が絡む交通事故を引き起こしてしまい、その賠償金の高さから、上司の大目玉を食らってしまった。

 

説教を受けた帰り道、コ班一行はチェ課長とその捜査チームと鉢合わせする。

チェ課長は元々コの後輩だったが、先に出世をして課長になった警察署内のエースだ。

いつまでも班長止まりのコを終始見下しながら、「今から昼飯なんだが、一緒にどうだ?」と誘い、コ班とチェ班は一緒に食事をすることになった。

その席でチェは「手柄を挙げたいだろう?」と国際的に暗躍する一大麻薬密売組織の大物ボス、イ・ムベの潜入情報をコにタレこむ。

出世が見込めないだけでなく、麻薬捜査班の解体も近づいてきたことに焦りを感じたコは、なりふり構ってられずチェに情報をもらい、張り込み捜査をすることになった。

 

よくイ・ムベ一家から注文が入るという、アジトの向かいのチキン屋で張り込みを開始したコ班だが、一向にイ・ムベの足取りを掴めない。

焦るコにさらなる不運が続く。張り込みに使用してたチキン屋が閉店することになったのだ。

活動拠点を失いそうになったコは苦渋の決断の末、なんと自分の退職金を前借してチキン屋を買い取ることにした。

 

チキン屋を自由に使えるようになり、捜査が捗ると思ったコだったが、イ・ムベ一家の注文を待ちながらチキン屋の営業を続けると、一般の客まで来店するようになった。

いつまでも「今は準備中なので…」と客を追い返してばかりいては怪しまれてしまうので形だけでもチキンを提供することにした。

しかし、コ班の全員料理経験は乏しい。一度全員でチキンを揚げてみると、カルビが名物の水原(スウォン)出身であるマ刑事の揚げたチキンが一番それらしかったので調理はマ刑事が担当することになった。

その他にコが店長、チャンが接客配膳、ジェホンが仕込み、ヨンホがアジトの張り込みを担当することになった。

すると、早速一般客が来店した。マ刑事がチキンを揚げて客に出すまでは良かったが、客に「このチキンにタレはついてないの?」と突っ込まれてしまう。

しかし、マ刑事もチキンのタレの作り方は知らない。

仕方ないので、適当にチキンを故郷の水原カルビのタレに浸して客に出したところ、これを食べた客は「美味い!美味い!」と大興奮。

この評判を聞きつけた客が連日チキン屋に押しかけ、店は意図せず大繁盛してしまう。

この店を取材しようとテレビ局が訪れるが、犯人グループに顔が割れたり、こんな潜入捜査をしていることが警察署にばれたら大変なことになるので取材を断った。

しかし、テレビ局のプロデューサーは侮辱されたと思い、報復を企てる。

のちにこれが大きな転機を呼ぶことになる。

 

捜査をしようにも大繁盛の店の切り盛りが忙しくて手が回らない。せっかくアジトに動きがあり、尾行をしていたヨンホが応援を頼んだにも関わらず、店のを仕切るのに精いっぱいで無視してしまう。

チキン屋に戻ったヨンホが「なんで誰も応答してくれなかったんだ!」と怒りをぶつけると、「お前こそ店が忙しい時に何やってたんだ!」と逆切れされてしまう。

これでは警察とチキン屋、どっちが本業かわからない。

本業の捜査の時間を作るために値上げをして客の数を減らそうとするが「高級チキンでSNS映え!」と余計に客が増えてしまう。

仕方なく1日50羽限定ということにして何とか客を抑えた。

 

しかし、毎日毎日張り込みばかりしていることを怪しんだ署長からコ班全員呼び出しを食らい、説教を受けることになった。

その最中にようやくアジトのビルから注文が入る。

全員すぐさまチキン店に戻りチキンを揚げ、装備を万全にしてチキンを配達に向かうが、応対に出たのはこのビルの大家だった。

コが「ここにいた人は?」と聞くと「今日引っ越した」と大家が答えた。

大家は知人と引越し後のテナントの片づけをしていて、差し入れにチキンを注文したのだ。

「なぜ今日に限って署長は呼び出したんだ・・・」

これまでチキン屋に扮して続けてきた捜査がすべてパーになってしまった。

 

麻薬捜査班の解体はもう決まったも同然、しかしチキン屋で成功しているのだからこれからはチキン屋を続ければいいと思った矢先、いつか取材を断ったテレビ局がチキン屋の告発番組を放送してしまった。

「水原カルビ味チ※※は、法外な値段に値上げし、時には他店で買ったチキンをそのまま客に提供している!」

どれも捜査の時間を作るために仕方なくしたことだが、それが悪いように捉えられてしまった。

さらに、この副業が署長にもバレ、ついにコ班長に停職処分が降りてしまった。

 警察官として停職処分は退職勧告と同義、さらに退職金をつぎ込んだチキン屋の評判もガタ落ち、コは窮地に立たされた。

 

他にすることもないコ班の一行はチキン店に集まって今後について話し合っていた。

そこにチョンと名乗る一人の経営コンサルタントがやってきた。

「名店は難癖をつけられても簡単につぶれないものだ。我々の好物は傷物になった優良品です。皆さんのレシピとノウハウをお借りして全国チェーンを展開したい。」

とチキン屋のフランチャイズ契約を持ち掛けてきた。

全員最初は詐欺を疑ったが、「あなた方をだましても大したお金にならない。」と言われ、アタッシュケースに入った札束の山を見せられるとすっかり態度を軟化させ、契約に応じてしまう。

しかし、このチョンの正体はイ・ムベの部下だったのだ。

潰れかけのチキン店を利用して怪しまれずに麻薬を運ぶことが目的だったのだ。

 

そして、場面はイ・ムベに切り替わる。

イ・ムベは敵対する大物マフィアのボス、テッド・チャンが経営するピザ店に赴き、手を組もうと打診してきた。

イ・ムベが中国で入手した麻薬を、テッド・チャンが韓国国内で売りさばき、韓国中で誰も容易に麻薬が手に入る世の中にしようという提案だった。

 

一方、再開したチキン屋のチェーン店は、イ・ムベらが用意したならず者たちが店番をしているので上手く店が回るはずがない。

料理はまだかと催促した客の前で店員同士が喧嘩をしたり、団体客を脅して追い返してしまったり無茶苦茶だ。

それを知ったコはチョンにクレームを入れ、さらに各自各支店の様子を探ることにした。

すると1日に30回も配達が発生する店舗があった。しかも妙なことに配達を頼んだ客はチキンを受け取るとすぐに捨ててしまう。妙に思ったコとヨンホはチキンの注文の配達ルートを周ることにした。

すると二人は配達ルートがいつも一定のルートを辿っていることに気づいた。

客の一人を尋ねると目は血走っていて、腕には注射痕があった。

そこでコはチョンらがチキンの配達に見せかけて薬物を流通させていたことに気づいた。

 

一方、マ刑事は見回りに行った支店がまだ営業時間中なのにも関わらず店を閉めて麻雀に興じているのを見て一度は叱責したものの、ギャンブル好きの性格が災いして自分も混ぜてもらうことにした。

マを警戒している店員らはマに聞かれないよう中国語で会話をし始めた。その中でポロッと麻薬取引に関する情報を喋ってしまった。

しかしマ刑事は実は中国系の出身で、中国語が理解できる。そのことが店員らにバレて、ぼこぼこにリンチされてしまう。

マはイ・ムベのもとに連行され、警察手帳を所持していたことからコ班のメンバーが潜入捜査中の警察官だとイ・ムベ一家にバレてしまう。

イ・ムベはマ刑事を監禁し、コ班をテッド・チャンとの取引の現場におびき寄せて、始末しようを企てる。

 

マ刑事と連絡がつかないことを心配していたコ班だったが、イ・ムベ一家から「マ刑事を監禁しているから助けに来い。場所は後で知らせる」と動画が届く。

すぐ助けに行こうにも、マ刑事の居場所がわからない。どうするべきか悩んでいると、突然コ班の紅一点チャン刑事がカップル用の位置追跡アプリを起動した。

実はマ刑事とチャン刑事は内緒で交際していたのだ。マ刑事が拘束されてる場所が分かったコ班はすぐさま現場に急行する。

一方、拘束されていたマ刑事は実は元柔道の韓国代表選手で、なんとか自力で拘束を解くと「頭が悪いのによく警察官になれたな、と言われるが俺は特別採用だ!」そう言ってイ・ムベの部下たちを一網打尽にやっつけてしまった。

部下の一部が車でイ・ムベとテッド・チャンの取引現場に向かうのを見て、それを尾行することにした。

 

そして、取引の現場に到着したマ刑事はイ・ムベとテッド・チャンが麻薬の売買をしている現場を目撃する。マ刑事はとっさの機転を利かせ、スマホアプリを使ってパトカーのサイレン音を鳴らす。

警察が来たと勘違いしたイ・ムベ一家とテッド・チャン一家は乱闘を始める。

そこにコ班全員が合流した。大勢のマフィアを相手に総勢5人では到底太刀打ちできないと思いきや、元柔道韓国代表のマ刑事の他に、ヨンホ刑事は人を殺したこともあるとも噂される、海軍の特殊部隊出身、紅一点のチャン刑事はゾウの首も一蹴りで折る元ムエタイチャンピオン、

一番若手のジェフン刑事は学生時代野球部に所属していた。濁らせた物言いだが、韓国では運動部に入ると忍耐強くなる。そして、ジェフン刑事は相手の攻撃を受けてもまるっきり痛みを感じていなかった。

そしてコ班長は20年間凶悪犯を相手にしてきて、12回も刺されているのにもかかわらず平気で生きている、ゾンビと呼ばれる男だった。

 

5人の活躍によってマフィア衆を追い詰めていくが、乱闘騒ぎの中、イ・ムベはこっそり仲間を見捨て自分一人だけボートに乗って中国へ脱出しようと試みる。

班長はそれを逃さず自分もボートに飛び乗り、イ・ムベと一騎打ちに出る。

丸腰のコ班長は苦戦するが最後はパンチの相打ちになり、不死身の男コが勝った。

 

そこに後輩のチェ課長らの応援が駆け付け、事件は一件落着となる。

解体寸前だった麻薬捜査班だったが、5人はイ・ムベとテッド・チャンの大物マフィア2人とそのグループを逮捕したことを表彰され、チーム全員が特進する。

 

【感想】

とにかくとても面白かったです。勧善懲悪のスカッとする内容なのがまたいいですね。

そんな大笑いするほどのジョークの切れ味ではなく、例えば映画館で観てもクスッとくるぐらいの笑いだと思うのですが、どうも私にとってはツボだったようで、ここしばらく観た映画では一番腹を抱えて大笑いしました。

 

韓国では「高卒はチキン屋になるか、餓死するか、過労死する」というブラックジョークのような言葉があるそうです。チキン屋は手持ちの金が少なくても始められるビジネスだからだそうです。

(そういえば最近の日本でも唐揚げ専門店って増えましたね・・・)

コ班の警察官たちも普段から厳しい労働環境にいますが、それもチキン屋に通じるところがあるかもしれません。

最後の決闘でイ・ムベに「なぜ警察を停職になってチキン屋になったお前が俺の邪魔をする?」と聞かれたコ班長が「商売を邪魔されたからだ、俺たち零細業者はみんな商売に命を懸けている」というセリフを吐くシーンは日本の労働者階級の私にもなぜかジーンとくるものがありました。

 

音楽の軽快さもよし、美味しそうな料理のシーンもよし、韓国の生活実態が知れる風刺っぽさもよし、とてもおすすめの一本です。