『ウドウロク』(有働由美子)
【タイトル】ウドウロク
【著者】有働由美子
【読んだきっかけ】有働由美子さんはどんな人なんだろうと興味があったから
【私的評価】★★★★★
【あらすじ】
ウドウロク、逆から読むと「クロウドウ(黒有働)」
冒頭でそんなことが書かれていました。
フリーアナの有働由美子さんがNHKを退社されるタイミングで出されたエッセイです。
NHK時代に児童施設に取材をした話、NY局に異動になった話、紅白の司会に抜擢された話、恋愛の話、お見合いされた話、ご家族とのお話など、
普段テレビで見るだけではわからない有働さんの色んな一面を知ることができる1冊。
【感想】
とても面白かったです。
本の中でご自身について「昔から文才があり、欲しい本があると作文コンクールの応募して賞を獲って景品の図書券で本を買っていた」とおっしゃる通り、
丁寧でわかりやすく、表現も豊かな書き方でとても読みやすい1冊でした。
ですが、読むのに時間がかかりました。
それは私の読むスピードが遅いということもありますが、一つ一つのエピソードが
いちいち感心できるものばかりなので、1章読んで様々な思いを巡らせ、
また1章読んでは深く考え…というのを繰り返して読むのが遅くなりました。
とても良い本に巡り合えたなと思いました。
いつもテレビの前では完璧に仕事をこなす有働さんですが、やはり裏では
人一倍全力で取り組んでいるんだな、ということがよくわかりました。
NY局時代にはストレスで脱毛症に悩まされたほどだそうです。
特に印象深かったのは新人時代に取材をしに行った児童施設でのエピソードでした。
詳しい話は割愛しますが、
「憧れの職業に就いたのに理想と違う仕事を任された」という経験ならまだしも、
「理想の仕事をしているはずなのに、その仕事について自分の考えが甘かった」
という経験はとてもショックを受ける出来事だと思います。
これはアナウンサーという職業のみならず、多くの方に共通する
最初の「壁」のようなものではないでしょうか。とても良いお話でした。
紅白歌合戦の司会の裏側などの話も、普段テレビ業界にいない私たちには
中々見られない部分を垣間見れたのはとても良かったです。
これから先、また繰り返し読み返したくなるような一冊でした。
映画『ムーンライト』(ネタバレあり)
※この記事はネタバレを含みます。
【タイトル】ムーンライト
【観た媒体】ネットフリックス
【観たきっかけ】アカデミー賞作品賞なので
【私的評価】★★★★☆
【あらすじ】
内気な黒人少年、シャロンの半生を描いた作品。
同級生にいじめられていたところをドラッグの売人フアンに助けられ、交流を持つが、
シャロンの母親ポーラにフアンの一味がドラッグを売っていたことを知り、絶望する。
高校生になったシャロンは相変わらずいじめられる日常を送っていた。
母親の薬物依存は強くなり、売春婦として働きだした。
ある夜友人のケヴィンにビーチに誘われ、大麻を嗜みながらキスをし、手淫に至るが
翌日いじめグループがケヴィンにシャロンを殴るよう命令し、シャロンはリンチされてしまった。
その復讐としてシャロンはいじめの主犯格を椅子で暴行し、少年院に送られてしまう。
少年院を出たシャロンはドラッグの売人となった。
ある日、かつての友人ケヴィンから一本の留守電が入っていた。
現在マイアミで料理人をしていること、会ってリンチ事件のこと詫びたいという。
更生施設に入った母親ポーラとの面会日、ポーラはシャロンに売人を辞めるよう諭す。
シャロンがポーラに激しく反論すると彼女は涙を流し、過去を後悔した。
マイアミのケヴィンを訪ねたシャロンは食事をしながら近況報告をする。
ケヴィンは現在離婚して息子の養育費のために働いている。
ケヴィンの家を訪れたシャロンはケヴィンに会いに来た理由を打ち明ける。
ケヴィンはただ彼を優しく抱きしめた。
【感想】
不幸な境遇から抜け出せない日常が淡々と続いていくのがリアルでした。
人生の端々でフアンや、ケヴィンのような自分の味方となってくれそうな人物が現れ、
シャロンは心を開いていくのですが、フアンは自分の母親を廃人にしたドラッグの売人で、性的指向を共有できるかと思ったケヴィンには子供がいるという、
中々救われない不幸が続きます。
でも、現実ってそういうものですよね。中々上手くいきません。
シャロンがリンチに遭った後、学校のカウンセラーから「あなたを守りたい。
誰がリンチをやったのか話して」と説得されるのですが、シャロンは黙秘しました。
きっと話すことでケヴィンに処罰が及ぶのを恐れたのでしょう、
そんなことを言っても、普通はいくら親友でもいじめに加わった時点で
義理立てする気になれないと思うのですが、それだけシャロンにとってケヴィンは
縋りつきたい希望だったのだと思いました。
表現でいえばフアンがビーチでシャロンに語り掛けた「夜のビーチで黒人の子が月明かりに照らされると青色になる」という表現はすごく印象に残りました。
『一生折れない自信のつくり方』(青木仁志)
【タイトル】一生折れない自信のつくり方
【著者】青木仁志
【読んだきっかけ】自分にコンプレックスがあり、悩みを抱えていたから。
【私的評価】★★☆☆☆
【あらすじ】
著者の青木氏は現在ご自身で創業された会社のCEOをされています。
若い時はご苦労されたようで、17歳で高校を中退し、実家を出て社会で働き始めてからいろいろな職を経てセールス業で成功し、ご自身の会社を設立されました。
その経験から培った仕事論、生き方論について語られています。
【感想】
私は「これを読むことで自信のなさ、コンプレックスからくる生きづらさ、息苦しさから解放されるのかな?」という思いで本書を読み始めたのですが、
やはりビジネス自己啓発本なので、「あなたは絶対にできる!もっと頑張れ!」という根性論が主な内容でした。
もちろん「絶対にできる!」という思い込みの力、自己暗示をかけることはとても大切なのですが、読んでいて疲れる内容でした。私には合わなかったのかもしれません。
しかし、本書は本来セールスや営業で「俺は絶対営業成績トップに立って成功するぞ!」という方の為のもの。
そういう方々にはたとえ根性論を前面に押し出して周りとの衝突が生じたとしても、これぐらいの気概は必要なんじゃないか、というのは理解できました。
かと言って、まったく参考にならなかったのかといえばそうではありません。
生きる上、働く上で「あー確かにこういう心がけって大切だよね」というヒントは各所に見て取れました。それも一か所ではなくたくさんありました。
部分部分では納得できることがあるので、単にセールスでトップに立つのが目的でない方も、印象に残った個所を心に留めるか、メモを取りながら日々の生活に活かしていけばいいのではないか、と思います。